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NOV 1, 2o2o
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”雑誌”

SARAXJIJIを立ち上げた20年前。
もともと畑違いで仕事をしていた私は、服を作る仕事のキャリアも浅く、たくさんの壁にぶつかっては、 それをどうしたらいいんだろうと都度に模索し、立ち上げて数年の間で学んだ様々な感情を顧みたタイミングだった2006年、ブランドロゴを作り変えました。
SARAXJIJIのロゴの下に「Tack så mycket」と入っているのですが、以前のインテリアの仕事で影響を 受けた北欧スウェーデンの言葉で「ありがとうございます」という意味で、 自分が常にありがとうという感謝の気持ちを持てるような仕事をしよう、と決意した現れでした。

昨年、そんなロゴを見て「何故、スウェーデン語なんですか?」と聞かれたことがきっかけで知った雑誌があります。
a quiet day」という、北欧のクリエイター達の物事の捉え方、社会への関わり方を現地取材・撮影して、美しい写真とともに発信している雑誌です。

この雑誌の編集長である岩井さんからの質問がきっかけで、すっかり雑誌を買う習慣から離れていた私は、北欧にフォーカスしたこの雑誌を知ることとなり、早速数冊購入したのでした。

以前のblogで、エッセイが好きなのは作り手のハレではなくケの部分を垣間見ることが出来るから、と書いたことがあるのですが、この「a quiet day」も、遠く離れた、しかも大好きな北欧で活動する様々なジャンルのクリエイターたちの、根本的な考え方感じ方や想い、そして素の部分を文章と写真から垣間見れることがとてもいい刺激になるのです。

その感じ方は、自分もモノを作る側だからというところも大いにありますが、きっとこれは、どんなジャンルのどんな仕事をしている人にとっても、誰かと自分を客観的に捉えることが出来るのを促してくれる雑誌なのではと思います。
自分の行なっていることがどんな人の役に立っているのか、それがまた自分にとってどんな感情の恩恵があるのか。人とモノ、人と人を介して、どんな化学反応があって、それがどんな風に面白いのか…。作るという行為でなくても、自分が関わっている行いがどんな風に社会の中で動いていて、誰かのどんな日々のかかわりになっているのか。そんなことを、考えさせられているのではないかと、読むほどに感じます。

クリエイターたちは、モノという物質と対話しながら自分の中で昇華させて、かつ、直接的であったり間接的であったりしながらも、キュレーターやバイヤー、その他のたくさんの人と関わりながら、またその先の誰かにも、さらに客観視した自分自身にも、想いを馳せているんだろうと思います。
そのイメージ力というのは、きっとどんなシチュエーションにも必要で、あればあるほと人間として豊かなのでしょうね。

国は違うけれど、本質的なところは同じなのだと、自分自身も旅をしていろんな異国の方とお会いしても思わされます。もとを辿れば繋がっているんだと思えば、それも然りだなと納得出来ます。
単なる「素敵な暮らし」を提案しているような雑誌とは程遠く、人生というものを考えさせられる、心の奥の奥まで内観してしまうきっかけになるような、私にとってはそんな雑誌です。

THE 10TH FLOORにいらっしゃる方にも手にとっていただけたらと、お取扱いさせていただくことになっています。写真は最新号。 北欧だけでなく、日本のクリエイターも入っていて、これまた読み応えがあります。ついつい疲れてコテンと寝てしまうところを、ゆっくりとお風呂に浸かって、リラックスしたベッドの中で読むのもよいなと思います。ご興味のある方はぜひ、THE 10TH FLOORでこの本について、ゆっくりお茶をしながらお話しましょう。

どのクリエイターにも質問されている「あなたにとって愛とはなんですか?」という問いが、 また興味深いです。究極の問いです。私だったら、なんて答えるだろう…。