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Lightly

MAY 2, 2o2o
Lightly

”軽く、軽快に、明るく、陽気に。そして穏やかに、温和に”


これは、2020年春夏のテーマとして選んだ言葉です。
今まで20年、普通のブランドのようにシーズンコレクションのテーマを掲げることはしていませんでした。

デザイナーが1人で誰かのために作り始めたことが、ご要望に答えるためには1人では出来なくなって、
作る点数も、かかわってくださる方も少しずつ増えて、今に至っています。
小さなアトリエであることは変わりませんが、いろんなところで、いろんなスペシャリストに関わっていただいています。

とにかく、いい素材を探すところから始まりました。
いい素材というのは、肌に触れた時にどう感じるか、が一番のポイントです。
オーガニックであればあるに越したことはありませんが、選択肢が狭くなります。
出来るだけ、表書きや冠で選ぶのではなく、実際に触って、使って、とにかく気持ちがいいもの。
そしてそれがどうやって編まれたものか。どんな方法で織られたものか…。
そうやって素材そのものをあらゆる角度から精査して選び、または作ってもらってきた素材が、
SARAXJIJIの服のベースとなりました。

形はシンプルなデザイン。それもあくまでも、私がそうだと思うシンプル。
それは主観的なもので人によって捉え方が違うので、定義は難しいのですが、
住空間を考える以前の仕事の経験から、「永く使えるもの」「永く愛されるもの」として
着るものも考えたかったということが、根底にあると思っています。

そうやって、毎年毎年、少しずつ新しいものを入れながら、ずっと作り続けている服たち。
丸20年を迎えて、これからも続けていきたい。そう思っていたところで、こんな情勢になっていることに、
いろんな想いを巡らしながら、それでも日々出来ることをと思って過ごしています。

いままでは、お取扱店からお客様の反応を教えていただいたり、
実際に各地での展示会でオーナーさんやお客様にお会い出来たり。
いろんなお声をいただくことが励みで続けてこれたと思っています。
今年の頭に、これからも続けていきたい、と思ったのは、今も変わりませんし、そう希望しています。
でも、時々、この情勢に対して、どうやって続けていけるだろうか、と模索する時間も増えました。
そうなってくると、そもそも、続けることに意味があるのだろうか…なんて思ってしまうこともあります。
それを、いやいや、笑って元気出して、頑張っていれば大丈夫!と言い聞かせていたりもします。

今、そうやって直接手渡せないお客様や、いつものように心軽くお買い物出来ない方が、
少しでも軽やかになれるきっかけになればと、Bアイテムを差し上げたりしています。
それはいつの日か、みんなが餅は餅屋で得意なこと、好きなことを仕事にし、通貨がなくてもまわっていけばよいのになあ、
という希望もどこかにあるからなのかな、と自己分析しているところです。

直接お会い出来ない中でも、いろんな方から「気持ちがいい」「素材が好き」などと、
日々の彩りになっている様子を伺えるような、励ましの言葉をいただいています。
とある仕事関係の方からは、この状況でラフィーガーゼに触れて、心癒されたから、ラフィーガーゼを
作ってくれてありがとう!とメールをいただいたり、
また別の方は、この閉鎖された状況で体調を崩していて、気持ちよく着れる服がSARAXJIJIだけだったと、
そもそも好きだったけれど、とにかくそれを伝えたかったと言われた時に、思ったことは、
本当にそれが、私たちの、私自身の元気の素なのだということでした。
どこかの記事で、もし通貨という概念がなくなっても、自分の仕事を続けたいか、必要とされるか、と
問われていたのを目にしたことがありますが、
私がこの仕事を通して欲しいものは、「誰かが喜んでくれること」なのだなあと、今回のことでより一層感じたのです。
だから、この記事の問いに対する答えは、「続けたい」なのです。

幸い、同じような気持ちで支えてくれるスタッフたち、サポートしてくれる人たちがいます。
時々、衣・食・住の優先順位からいくと、もしかしたら必須ではないかしら…と思ってしまうこともありますが、
今までこの世の中にあった、人々が作り上げてきたものを考えても、
必要ないものってそうないんじゃないかと感じるように、
私たちのやっている仕事も、必要でないことはないと思うようにしています。
心安らぐ音楽を作っている人、心と身体にいい食材や料理を作ってくれる人、家具を作っている人、家を作っている人…。
今は遠ざけられているけれど、やっぱりないことで心落ち着かないことがわかった気がします。

もとの世の中に戻って欲しいというよりは、もっともっとよくなるといいなと思っています。
それは、人と人が分断されることなく、誰もがいつでも心おだやかだったり、明るかったり、軽やかだったり。
きっと、今までよりももっと、そうなって欲しいという希望も込めて、思っています。

今年のテーマなどをいつもつけないのに、こうやって敢えて選んだ言葉が「LIGHTLY」だったことも、
もしかしたら私にとっては偶然ではなかったのかもしれません。

そして、SARAXJIJIのロゴの下にある文字”Tack så mycket”は、ありがとうという意味のスウェーデン語です。
日々感謝する気持ちで仕事をしよう、とつけたこの言葉は、SARAXJIJIの大きなテーマです。